売上7億円から2億円へ転落
1,000社に断られた“糸”が、累計1,400万枚の「魔法のタオル」になるまで
中国製品の台頭で、売上は7億円から2億円へ激減。 父からは「倒産する前に廃業しよう」と告げられた。
それでも諦めなかった。世界に存在しない糸を作るため、紙、ゴム、藁、鉄、さらにはトイレットペーパーまで撚り続けた。
たどり着いたのは、水に溶ける特殊な糸。1,000社に断られながらも挑戦をやめず、同じく倒産寸前だったタオルメーカーと手を組み、累計1,400万枚を売り上げる大ヒット商品を生み出した。
浅野撚糸株式会社 代表取締役社長・浅野 雅己さんの逆転物語。

ストーリー
35歳で家業を継ぎ、2代目社長に就任した浅野雅己さん。最新設備を積極的に導入し、創業以来最高となる年商7億円を達成した。
しかし2000年代に入ると、状況は一変する。安価な中国製品の流入により、主力だった撚糸の需要は急速に失われ、売上は2億円にまで落ち込んだ。
先代である父からは、こう告げられたという。
「倒産する前に、廃業しよう」
絶頂から、奈落へ。会社の歴史そのものが、終わりを迎えようとしていた。

それでも浅野さんは、倒産も廃業も選ばなかった。
支えてくれる取引先に、迷惑はかけられない。守るべき社員もいる。生き残る道はただ一つ――誰にも真似できない独自技術を持つことだった。
「世界にない撚糸を作る」
無謀とも思える挑戦が、ここから始まった。
紙、ゴム、藁、鉄。撚れるものは、何でも試した。さらにはトイレットペーパーまで撚りにかけた。
社員からは「社長がおかしくなった」と囁かれるほど、浅野さんは研究にのめり込んでいった。常識では考えられない素材と向き合い続ける日々。だが、その執念こそが、後の奇跡への土台となっていく。

ある日、浅野さんは一本の糸と出会う。
大手素材メーカーが開発した、水に溶ける特殊な糸だった。お湯に入れると溶けてなくなる――その性質に、彼は大きな可能性を感じ取った。
研究を重ねること2年。ついに、通常の綿糸の約2倍に膨らむ特殊撚糸「スーパーゼロ」の開発に成功する。世界に存在しなかった糸が、ここに誕生した。

完成した糸を携え、浅野さんは営業に走り回った。
しかし、結果は惨敗だった。1,000社以上に提案するも、採用してくれる企業は一社も現れない。革新的なはずの糸は、誰にも理解されなかった。突破口の見えない日々が、ただ過ぎていく。
そんな中、銀行の紹介で一社の老舗タオルメーカーを訪ねる。1908年創業の小さなタオルメーカーだった。
実はこちらも、売上がピーク時の3分の1まで落ち込み、倒産の危機に瀕していた。崖っぷちの撚糸メーカーと、崖っぷちのタオルメーカー。
期待などしていなかった。だが、返ってきた言葉は予想外のものだった。
「やりましょう」
こうして、生き残りを賭けた共同開発が始まった。
しかし、開発は失敗の連続だった。何度も機械が止まり、糸は切れた。先の見えない試行錯誤に、浅野さんは限界を感じ、ついに頭を下げる。
「申し訳ない。別のメーカーを探してください」
すると、タオルメーカーから返ってきたのは、こんな言葉だった。
「続けましょう。私たちは運命共同体でしょ」
二社は、最後まで諦めなかった。
試作回数は、300回を超えた。改良に改良を重ねた末、新たな「スーパーゼロ」が完成する。
そしてその糸から生まれたのが、タオルブランド「エアーかおる」だった。
一般的なタオルの約1.5倍の吸水力。洗濯を繰り返してもへたらない、ふわふわの肌触り。そして乾きやすさまで兼ね備えた、まさに革新的なタオルだった。

発売直後から、口コミは瞬く間に広がった。
累計販売枚数は、1,400万枚を突破。浅野撚糸の売上は10億円規模へと回復した。共に挑んだタオルメーカーも倒産の危機を脱し、売上はピーク時を超える水準まで回復した。
二つの町工場は、見事に逆転を果たした。
絶体絶命の危機から生まれた技術は、いまや日本を代表するヒット商品へと育った。
諦めなかった町工場同士の挑戦は、いまも全国の多くの中小企業に、希望を与え続けている。

技術で逆転した
価格競争に飲み込まれるのではなく、技術革新で生き残る道を選んだ。
諦めなかった企業同士が手を組んだ
競争ではなく“共創”が、奇跡を生んだ。
1,000社に断られても続けた
普通なら諦める状況でも、挑戦をやめなかった。
企業情報
| 企業名 | 浅野撚糸株式会社 |
| 代表取締役社長 | 浅野 雅己 |
| 所在地 | 岐阜県安八郡安八町 |
| 事業内容 | 特殊撚糸の開発・製造 |
| 公式サイト | https://www.asanen.co.jp/ |
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出典・参考
- 浅野撚糸株式会社 公式サイト
- TV番組「カンブリア宮殿」
- ITメディアビジネスオンライン
- 日経ビジネス電子版


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